
そういえば、転職したときって給与をかなり重視して選んでたよね

そうなんだよ。資産があるから好きな仕事で選べるって思ってたのに、いざ動き出したら給与が基準の半分を占めてた

資産があっても、やっぱり給与って気になるものなんだね

うん。でも今思うと、コーストFIREをちゃんと理解してたら違う選び方ができたと思う。老後のお金はすでに確保できてたのに、その自覚がなかったんだよね

それって転職の選び方にも影響するんだ。どういうこと?

そこを今日は書いてみるね
この記事でわかること
- 転職で「給与を優先してしまう」のはなぜか
- コーストFIREの概念が転職の選択肢を広げる理由
- 資産が「逃げ道」として機能した体験
- FIREの知識は投資だけでなく、働き方の選択にも効いてくる
転職活動をしながら、ずっと引っかかっていること
転職を経験してから数年が経ちます。
振り返るといろいろあったんですが、今でもひとつ引っかかっていることがあります。あのとき、もしコーストFIREという概念をちゃんと理解していたら、転職先の選び方が変わっていたんじゃないか、ということです。
今日はその話を書いてみます。
転職を考えたのは、給与と将来性への違和感から
課長になったのに、手取りはほぼ変わらなかった
課長になって2年目のことでした。
管理職になって、基本給は年間70万円ほど上がりました。ただし残業代がなくなります。計算してみると、手取りはほぼ変わらない。それどころか、翌年以降の昇給はほぼなし。これ以上の昇格はほぼ無理で、年収の上限が見えていました。
管理職として責任だけが増えていく一方で、手元に残るお金は変わらない。その感覚が、じわじわと積み重なっていきました。労力と賃金が釣り合わないと感じたのが、転職を考えたきっかけです。
2次請けSIerという構造の中で、将来の天井が見えてきた
当時のわたしは、いわゆる「2次請けSIer(システムインテグレータ)」として働いていました。
IT業界には多重請負という構造があります。元請け(プライムベンダー)が顧客から仕事を受注し、それを2次請け・3次請けの会社に発注していく仕組みです。下流になるほど、顧客との距離は遠くなり、仕事の単価も削られていく傾向があります。
2次請けの立場では、元請けに対して単価の交渉をすることになります。ただ当時の会社には「仕事があるだけありがたい」という空気があり、元請けに対して積極的に条件を引き上げようとする姿勢は薄かったです。結果として、給与の天井もなかなか上がらない。
上流に行くには、元請けに転職するか、自分でスキルを積んで引き抜かれるしかない。その道筋が見えにくいまま年齢を重ねていくことへの閉塞感が、転職を後押ししたもうひとつの理由でした。
給与の頭打ちと、多重請負という構造的な将来性への不安。このふたつが重なって、転職に踏み出すことにしました。
いざ動いてみると、給与が選択基準の半分を占めていた
「やりたい仕事で選ぼう」と思っていたはずなのに
転職活動を始める前、わたしはこう思っていました。
「資産がある程度あるから、給与にこだわらずやりたい仕事ができる会社を選べる」と。
でも実際に動き出してみると、そうはなりませんでした。後から振り返ると、わたしが転職先を選んだ基準はこんな割合でした。
| 選択基準 | ウェイト(概算) |
|---|---|
| 給与・待遇 | 50% |
| やりたい仕事かどうか | 30% |
| 会社の将来性 | 20% |
「やりたい仕事で選ぼう」と言いながら、給与が半分を占めていた。自分でも矛盾していると思いながら、なかなかそこから抜け出せませんでした。
転職理由の1位が給与なのは、自分だけじゃなかった
実はこれ、わたしだけの話ではないようです。
転職サイトの調査によると、転職理由の1位は「給与が低かった」で、男性ではとくにこの傾向が強いとされています。転職先を決めた理由でも「給与が良い」がトップです。
給与を気にするのは当たり前のことで、それ自体は悪いことじゃないと思っています。生活があるし、将来への不安もある。「もっと稼ぎたい」という気持ちは、とても自然なことだと思います。
ただ、FIREをある程度意識していたわたしの場合は、もう少し別の判断軸が持てたはずだったな、と今は思っています。
コーストFIREを知っていたら、給与のウェイトはもっと下げられた
コーストFIREの条件は、すでに満たしていた
転職当時、ファットFIRE(生活費のすべてを資産運用の利益でまかなえる、いわゆる「完全な経済的自立」の状態)には届いていないと感じていました。そのため「まだ資産を増やさないといけない」という感覚が抜けず、給与へのこだわりが残り続けていたんだと思います。
でも老後の資産という観点で見ると、わたしはすでにコーストFIREの条件を満たしていました。ファットFIREと比べてしまって、「まだ足りない」という感覚でいたんですよね。
コーストFIREとは、「現在の資産をそのまま運用し続ければ、老後の生活資金は確保できる状態」のことです。追加の積立は不要で、あとは今の生活費だけ稼げばいい。そういう状態を指します。(コーストFIREについては、別の記事で詳しく書いています)
「老後資金は確保済み」とわかっていたら、何が変わったか
もしコーストFIREを本当に理解していたら、こう考えられたかもしれません。
「老後のお金はもう確保されている。だから今の労働収入は、今の生活を楽しむためだけに使っていい。給与が多少低くても、やりたい仕事を選んでいい」と。
そう思えていたなら、給与・待遇の50%という基準はもっと下げられたと思っています。転職先の選び方が、少し違っていたかもしれない。「やりたい仕事かどうか」のウェイトが、もっと上がっていたはずです。
FIREの知識は、数字の計算だけじゃなくて、こういう「心理的な余裕」を作ってくれるものだと思っています。老後資金の心配がなくなると、今の選択肢の見え方が変わる。それがコーストFIREの、わたしが思う本質的な価値です。
「今の働き方をどう設計するか」という視点が抜けていた
サイドFIREという考え方もあります。完全リタイアではなく、好きな仕事や副業の収入を組み合わせながら生活していくスタイルです。
転職前に副業で少しでも収入があれば、「給与は抑えめでも副業を育てればいい」という選択肢が生まれます。「やりたい仕事でうまくいけばそちらを軸に、うまくいかなければ副業に力を入れる」という柔軟な考え方もできたかもしれません。
当時のわたしにはその発想がなかった。FIREに向けて資産を増やすことばかりを考えていて、「今の働き方をどう設計するか」という視点が抜けていたんだと思います。
FIREの知識って、資産形成だけじゃなくて、転職という場面でも選択肢の幅を広げてくれるものだったんだな、と後から気づきました。
転職後、想定外の壁にぶつかった
転職先はプライムベンダーで、顧客先に常駐する形でした。
2次請けから元請けへ。やりたかった仕事に近づいたはずなのに、そこには大きなギャップがありました。上流の仕事は、自分がこれまで経験してきた業務とは求められるものが違います。判断の幅が広い分、経験の浅い領域も担当する必要があります。
慣れない作業をこなすために残業が増え、月50〜60時間が半年ほど続きました。
心身のバランスを崩し、心療内科を受診することになりました。鬱や適応障害とまでは診断されなかったのですが、会社に業務量の調整を相談するよう言われました。
会社には正直に状況を伝え、「辞めることも含めて考えている」と話しました。すると苦手な作業をいくつか上司に引き取ってもらえることになりました。そこから1年ほどかけて、少しずつ安定を取り戻していきました。
資産が「逃げ道」になった——つらい時期に気づいたこと
「最悪辞めても食える」という感覚が、踏ん張る力になった
つらかった時期、積み上げてきた資産があることは、確かに支えになっていました。
「最悪辞めても、食うに困らない」という感覚です。次の仕事がすぐ見つからなくてもどうにかなる、という安心感。休みのたびにライフプランをシミュレーションして、「今やめても大丈夫」と自分に言い聞かせていました。
逃げ道があるから、踏ん張れた。そういう体験でした。
あのとき資産がなかったら、もっと追い詰められていたかもしれません。「辞めたくても辞められない」という状況だったら、精神的な消耗はもっと大きかったと思います。
FIREは「辞める」ためだけじゃなく、「今日を選ぶ」ためにある
この経験で思ったのは、FIREの価値は「完全リタイアできること」だけじゃないということです。
「いつでも辞められる」という状態は、仕事への向き合い方を変えてくれます。追い詰められない。「嫌ならやめればいい」という選択肢が手元にあるだけで、今日の仕事を少し落ち着いて見られるようになる。つらい時期を経て、ようやくそのことに気づきました。
今もまだ、次の一手を悩んでいる
現職はいい会社だと思っています。アラートを上げれば組織として対応してもらえる。個人が成長できる仕組みもある。
でも転職を経てから、ワークライフバランスについての考え方が変わったんです。もっとライフ寄りにしたい、という気持ちが強くなっています。再転職するのか、このまま続けるのか、今もまだ悩み中です。
ミッドエイジ・クライシスなのかもしれない、と思ったりもしています。
ただ、ひとつ気づいたことがあります。FIREを意識して資産を積み上げることは、「仕事を辞める準備」だけじゃなかったんだと。転職という大きな選択の場面でも、資産があることで動ける選択肢が広がっていた。給与を最優先にせざるを得ない状況と、そうでない状況とでは、見える景色がまったく違うと思っています。
FIREを目指すことは、リタイアを目指すことだけじゃない。人生のいろんな場面で、選択肢を増やしていくことでもあるんだなと、転職を振り返って感じています。
この記事のまとめ
- 転職活動では「給与」が選択基準の50%を占めていたが、コーストFIREを知っていたらそのウェイトはもっと下げられたと思う
- コーストFIREとは「老後資金はすでに確保済みで、あとは今の生活費だけ稼げばいい状態」。ファットFIREに届いていないからといって、コーストFIREの条件まで満たしていないわけではない
- 転職理由の1位が給与なのは統計でも裏付けられており、気にすること自体は自然なこと。ただFIREの視点があると、判断軸が変わる
- 資産があることは、つらい時期の「逃げ道」としても機能した。「最悪辞めても食える」という感覚が、踏ん張る力になる
- FIREは完全リタイアだけが目的ではない。「いつでも辞められる」という状態が、今日を納得して過ごす力になる

